不況で「夜逃げ屋」大忙し 順番待ち40人、ヤミ金も…

 夜逃げを手助けする「夜逃げ屋」。荷物をトラックに詰めて短時間で居所を移し、後の仕事まで面倒を見てくれる。最近、不況に苦しむ経営者らが、ヤミ金融業者からの高圧的な取り立てから逃れるために、利用する場合が増え、大忙しという。

  大阪市内のある「夜逃げ屋」の事務所では最近、朝からひっきりなしに依頼の電話がかかっている。関東にも事務所を持ち、例年、年間約100件ほどの夜逃げを手がける。今年は秋口にその数を超えたという。

 社長(35)によると、秋の1件は、9月の「リーマン・ショック」の記憶が新しいある日の午前に決行された。男性スタッフ3人が2トントラックをマンションに横付けした。下見は終わっていて、持って行く荷物は決めてある。「夜逃げ」だが、音が響く夜には絶対にやらないという。

 荷物を丁寧に段ボール箱に入れている時間はない。債権者が暴力団であることも多く、見つかったら危ない目に巻き込まれるかもしれない。服をごみ袋に入れて緩衝材代わりにしながら、家財道具を裸のままどんどん積み込んだ。所要時間は長くて2時間。普通の引っ越し業者の半分から3分の1の短時間で済ませる。

 あらかじめ懇意の家主に手配しておいた部屋に荷物を運びこんだ。墓の横などの立地だったり、日当たりが良くなかったりするように条件が悪い物件を格安で貸してくれる。

 社長によると、こうした「夜逃げ」に現在約40人が順番待ちをしているという。今秋、不況の根深さを実感した出来事があった。本来、高圧的な取り立てをする側のヤミ金業者が、さらに怖い取り立てを恐れて夜逃げしたのだ。

 その業者には運送業の借り手が多かった。ガソリン高でコストが上がり、不況で受注件数が激減。業績悪化が急速に進んだ。そのため次々と貸し倒れが生まれてしまい、ヤミ金業者そのものの資金繰りが行き詰まった。残った債務は暴力団からの数億円。脅迫まがいの激しい取り立てを受け、相談してきた。

また数億円で建てたビルを所有していた40代前半の男性の夜逃げにも携わった。コンピューター関係の会社を経営していたが、今秋、銀行から突然融資の返済を迫られた。運転資金に行き詰まり、ヤミ金から1千万円を借りた。

 ところがビルのテナントも思ったように入らず、入った物販店も退去して、収入も激減。ビルは借金のカタに取られ、ふくらんだ利子の返済に行き詰まった。取り立てで3人の娘に危害を加えると脅かされ、夜逃げの道を選んだ。

 夜逃げの費用は通常20万円前後。暴力団が絡むなど危険が伴うと手当がついて50万円ほどになる行き先は、もちろん秘密。同じ県内は避けるが、債権者と接触する道を残せるよう、隣県の場合が少なくない。お金がない依頼者も多く、分割や出世払いも可能だ。かかった費用を払ってもらうために、旅館の住み込みといった仕事も紹介する。

 「夜逃げはあくまで一時避難」と社長は言う。弁護士や認定司法書士を入れてもやまず、身に危険が及ぶような激しい取り立てを、いったん行方をくらますことでかわし、改めて法律の専門家を入れた法的整理を勧めるという。

 ■弁護士「借金が原因なら夜逃げの必要ない」  
ヤミ金問題に取り組み、映画「夜逃げ屋本舗」の監修もした宇都宮健児弁護士は、「借金が原因の場合、ほぼ間違いなく夜逃げする必要はない」と断言する。

 多重債務で厳しい取り立てに苦しんでいる場合、弁護士や認定司法書士に相談し、貸金業者に対し、受任通知を出してもらうことで取り立てを止められる。そのうえで任意整理や自己破産など法的整理に入ることを勧めている。

もし夜逃げした場合、その後の生活には困難がつきまとう。貸金業者は住民票の異動を絶えずチェックしていて、行き先が分かるとすぐ取り立てを再開する。異動先の住民票がなくて、パートやアルバイトなど不安定な職にしかつけず、さらに借金を重ねるケースも多い。さらに国民健康保険にも加入しづらいなど不利益も多い。宇都宮弁護士は「わざわざ夜逃げしなくていいのに、それを知らない人があまりに多い。無料の相談窓口もあるので利用してほしい」と呼びかけている。

 東京の弁護士会の相談窓口「錦糸町法律相談センター」(03・5625・7336)は年末年始は休み。「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」に所属する東京都千代田区太陽の会」(03・5207・5520)は来年1月7日から受け付ける。相談はともに無料。(岡田健)asahi.com


※夜逃げしたい気持ちもよく分かります。

 でも他の方法も沢山あります。

 まずは 相談を!! 

 経験者は語る。

 来年こそ皆さんにとっていい年でありますように!!