JALは潰してこそ甦る

屋山太郎(政治評論家) vs 中条潮慶應義塾大学教授)


9割の空港が赤字

 屋山 民主党政権になって、自民党政権時代には動かなかったさまざまな問題が動き始めました。その1つが航空問題です。いま話題となっている日本航空JAL)問題は、日本のずさんな官僚政治の象徴のようなもので、もうどうしようもないところまで来ています。

 去る9月15日に、国交省主催で「日本航空の経営改善のための有識者会議」があり、路線廃止や人員削減のリストラ計画が出されました。しかし会議のメンバーは皆、旧運輸省絡みの人で、前原誠司国交相はこれでは駄目だとその案を突っぱねた。それで、元産業再生機構高木新二郎氏、冨山和彦氏ら5人からなる「再生タスクフォース」を設置したわけです。この再生チームが練った再建案はきわめてドラスティックなものでした。

 中条 私もこの再生チームには期待しています。さらに9月末に前原大臣は、空港整備特別会計社会資本整備事業特別会計空港整備勘定。以下、空整特会)を抜本的に見直す、と明言しました。これには大賛成です。自民党政権時代では議論がまったく進まず、私も委員として参加していた規制改革会議では、とりあえず空港の収支を公開することまでしか国交省に認めさせられませんでした。空港が存在する地方の議員が、空港をなんとか維持しなくてはいけないと考えるものだから、必死に抵抗するんです。

 屋山 空整特会は、空港使用料、着陸料、財政投融資など、いろいろなものを含めて総額5280億円がつねにプールされています。当然、お金のない自治体は、くれという。そして必要がないにもかかわらずどんどん空港を造ってしまい、結果、いま国内に99も空港ができてしまいました。これは明らかに造りすぎです。特別会計に金が集まるシステムをつくり、未来永劫、ダム、河川改修などを続ける。最後は工事のための工事になる。それがいまの現状でしょう。

 中条 2010年3月の開港予定で進められている茨城空港も多額の空整特会が充てられています。じつは私は当初、茨城空港開港には賛成していたんですよ。なぜかというと、もともとある航空自衛隊百里基地の滑走路を共用するという話だったからです。それならばコストを抑えられる。ところが、新しく滑走路を造ってしまった。これは結局、新しい空港を造るのと同じことです。こういった無駄遣いが日本中で見られる。

 今年の5月、国交省と航空政策研究会が各空港の収支を算出したんですが、9割の空港が赤字です。ただ、すでに投資した分は除き、運営費用と運営収入だけで考えると、かなりの空港が黒字になる可能性はあります。また、日本では空港と空港ビルは別会社の経営で、空港ビルのほうはかなり収益を上げています。空港ビルは空港会社の施設(滑走路など)があってこそ稼げるわけですから、一緒に経営を行なえば、県庁所在地クラスにある空港は黒字になるでしょう。

 ところが、空整特会があるものだから、自治体側は空港のコストを抑えようとはしないし、自力で客を呼んでこようとも考えない。そして特別会計の資金を配分するのは国交省の官僚なので、自治体や地元の議員が国交省に圧力をかける。

 屋山 完全に中央集権なのです。たとえば、道路特定財源一般財源化しろといったら、1800の自治体の首長がほぼ全員反対です。なぜかといえば、「あそこで反対しないと、あとでひどい目に遭うんです」と。「じゃあ他の補助金も要らないの」と霞が関に脅される。

 中条 かつ、省庁は完全に縦割りです。あるとき北海道のある市長さんが「高速道路を早く欲しい」というんです。ただ本音は大学が欲しいらしい。しかし、高速道路は要らないから大学にお金使わせてください、といったら一銭も入らない。だったら高速道路を下さいといったほうが得だという。

 屋山 その象徴が、後期高齢者医療制度です。医療費に対する財政負担を年間2200億円倹約するといって、75歳以上の高齢者からお金をふんだくった。一方で、道路特定財源一般財源化した結果、5兆4000億円が道路以外にも使えるようになりました。この道路予算の25分の1でも老人医療費へ回せば、高齢者の負担は重くならずに済んだのです。しかし、国土交通省の予算を、役所の壁を越えて厚生労働省へ渡せなどとは、総理大臣であってもいえません。要するに、「省あって国なし」なんですね。

 中条 国の政治力はいまだ航空界に強い影響を及ぼしている。不要だと思われている空港をもつ、ある自治体の首長さんが、「うちは一銭たりとも自治体のお金を空港に使っていません。すべて国が面倒見てくれるんです」といって、威張っている(笑)。

天下りだらけの空港・航空会社

 屋山 航空問題は、自民党の族政治と中央集権の官僚政治のなかでねじられた縄のようなものです。というのは、小選挙区制になるまでは完全に利益誘導政治でしたから、地方選出の代議士は何か地元にもってきたい。議員が「ここに空港を造ってやる」というと、役所も権益を増やしたいから「お願いします」と呼応する。さらに、その地域の地場産業も、空港ができれば商売が栄えるので応援する。こうして政官業で利害が一致するわけです。

 中条 空港にしろ道路にしろ、費用を利用者が負担をするというシステムにすればいい。イギリスにブリストル空港という地方空港があります。この空港は条件的には静岡空港茨城空港と同じで、空港の勢力圏の人口は同等、首都と結ぶ路線がない。日本の国内線は、東京との路線がなければ基本的に経営は成り立ちません。現に、静岡空港茨城空港の需要予測は年間80万〜100万人といわれ、それさえオーバーじゃないかと批判されています。ところがブリストル空港は、ロンドンとの路線がないにもかかわらず、630万人の集客実績を誇っているのです。これは民営化して、空港が必死にマーケティング努力をしているからです。結果、ターミナルの商業収入もすごい。私は昔から「日本の空港を民営化しろ」と主張していますが、ブリストル空港に勤める人から説明を聞くと、その私でも辟易するぐらい、いかにして客を集めるのかを話します。

 翻って日本は、いまだ官僚や自治体関係者が空港経営をやっていて、儲けようという気がまったくありません。これを止めるためには、空港をすべて民営化して独立採算にしなければいけないと思います。

 屋山 空港を民営化するとなれば、おそらく問題となるのは外資規制です。2007年に、オーストラリアのマコーリーグループが、羽田空港ターミナルビルを所有する日本航空ビルディング(JAT)の株の20%近くをもって大騒ぎとなりました。政府は「国家の安全保障」を理由に、外資が入るのに大反対し、結果マコーリーは撤退してしまった。このとき羽田からマコーリーを追い出すようにもっていたのは経済産業省、つまり役所です。というのは、外資がはびこってくると自分たちの天下り先がなくなってしまう。

 中条 この問題に関しては、役所はとても敏感です。成田空港の完全民営化の際には、役所のほうから外資規制すべきという話が出たのですが、結局、いろいろな反対があって再検討することになりました。しかし、結果的にはもっと悪くなった。外資規制はやらないけれども、1株主が20%以上の株を保有することは禁止となったんです。

 屋山 空港を経営するためには過半数の株をもたなければいけない。これでは外資はもちろんのこと、国内の民間資本でも駄目だということになってしまう。

 中条 官僚はうまいです(笑)。彼らは、うまく問題をすり替えた。20%までだったら外資も投資できるから、外資規制はしていませんといえる。しかし実質、これで外資規制もできるわけです。

 屋山 日本の官僚って、そういうペテンみたいなことをやるんですよ。

 また、空港会社への天下りは昔からの慣行です。関西国際空港ができたときも、初代会長に元住友電気工業社長の亀井正夫さんが就任したのですが、彼が会長室へ行ったら、机に紙が置いてあって、もうすでに役員9人が決まっていた。見ると、各省から1人ずつだったそうです。

 成田空港でも2007年にやっと、民間人である元住友商事副社長の森中小三郎氏が社長に起用されました。これは安倍晋三総理の時代です。しかし、やはり1人ではどうにもなりませんでした。安倍さんもそれはわかっていたのですが、なにしろ足を引っ張る人間が周りに大勢いたので、結局、行政改革ができなかった。あのときに私は、もう自民党では駄目だ、政権交代しかない、と確信しました。

 中条 空港だけでなく航空会社自体も、官僚にとっては非常にいい天下り先です。昔は、国際線はJALのみで、いわゆる「ナショナル・フラッグ・キャリア」でした。そのため官と利害が一致して、持ちつ持たれつの構造ができあがってしまった。これはJAL側に特権意識をもたせた原因になっています。というのは、日本人にはどこか官尊民卑の考えがあるので、官に近いほうが偉いと思ってしまう。

 こういうプライドをもって、JALは会社を築いてしまったんです。だから、なかなか自分たちで自社を改革しようというマインドが育たず、どうせ国が助けてくれるという意識が働いてしまう。その結果が、いまの惨状ですね。

愛社精神のないJALの人々

 中条 そのJALの問題ですが、そもそも2006年にJAS日本エアシステム)と合併させられた際に、余分な路線や人員、さらには飛行機も抱え込んでしまいました。これが今回の経営破綻の1つの原因となっています。

 屋山 日本の航空会社が不採算の路線をやたらに抱えてしまう理由は、先に述べたように政官業の癒着構造があるからですが、最近は、何とか航空会社を呼び寄せようと、空港の周辺自治体が搭乗保証を設けるようにもなっています。

 たとえば、昨今空港建設で揉めた静岡空港は、JALに60%の搭乗保証を約束しました。搭乗率が六割を切れば、1人につき1万5000円を県からJALに払います、と。JALが了承すると、今度は静岡県のほうが、「静岡からJALが飛びます」と宣伝する。すると県民は喜んで空港建設に賛成します。搭乗率が6割を切れば1人につき1万5000円も税金が払われるとは、県民も思っていません。

 中条 空港が搭乗保証をするというのは、航空会社にとってはだいぶましな状況になった結果です。昔はともかく有無をいわさず飛べ、だった。

 しかし、搭乗保証に苦しむ自治体は多いのです。たとえば鳥取県は、アシアナ航空が日本で最初に米子空港に飛んできてくれたので喜んでいたんですよ。しかし70%の搭乗保証付きです。最初は物珍しさで韓国へ行く客は乗りますが、だんだん減ってくる。世界の航空会社はそれがわかっていますから、初めから、飛ぶ代わりに搭乗保証をちゃんとしてくれ、と要求します。実際、70%の搭乗保証を維持するために、鳥取県は必死ですよ。しかし、そうまでして国際線は必要なのでしょうか。自治体は真剣に考えなければいけません。

 屋山 国内の空港については自由化されていますよね。ならば、自治体は赤字路線を自由に廃止できるでしょう? 昔は認可制で、国が審査をして認可が下りないと廃止できませんでした。

 中条 いまは届け出制になったのですが、ANA全日本空輸)が新潟―福岡線を廃止しようとしたら、国交省の航空局が廃止の届け出を受け取らなかった。こういう拒否の仕方があるわけです。お役所の常套手段ですよ。逆に、新規参入したいという会社があっても、届け出を受け取らないということもできる。これは、実質的にはまだ自由化されてないのと同じです。廃止ができなければ、当然、航空会社は経営改善できません。

 屋山 路線の国交省支配ですね。航空会社はその犠牲になっている。本来は要らない路線がそうとうあると思います。

 話をJALに戻しますが、この会社自体が高コスト体質なのも問題なんです。先日CNNのニュースで、JALが褒められていましたよ。社長である西松遙氏の年俸が950万円に対して機長が3000万円なんて日本の社長は偉い、それに比べてGM会長は自家用機なんかに乗っている、と(笑)。

 社員の給料が高いうえに、退職者への企業年金の支給額がANAでは1人10万円以下なのに比べて、JALは1人につき25万円です。会社全体では年金財政は約3000億円の赤字です。JALはいま、日本政策投資銀行と民間金融機関とを合わせて総額1000億円の追加融資を要求していますが、これは焼け石に水でしょう。たとえ他の会社に買ってくれと持ち掛けたって、手を挙げる会社があるかどうか。一応、資産価値は4500億円と称していますが、実質的には2000億円ぐらいではないでしょうか。そして2000億円で買ったとしても、企業年金分の3000億円が自動的に負債としてくっついてくる。

 中条 いまのままでは、銀行はお金を貸さないでしょう。一時、銀行がJALへ融資を渋るのは風評被害で過度に不安が高まっているからだという意見もありましたが、私は風評被害ではないと思います。やはり相手は企業ですから、銀行はちゃんと財務状況を見たうえで判断していますよ。

 屋山 皆が、もう経営改善は難しい、と思っている。鳩山総理は公的資金を投入するといっていますが、公的資金で救済するつもりなら、いくらつぎ込めばいいのか分かりませんよ。国鉄民営化の際は結果的に27兆円もの税金を放り込んでしまいましたからね。本気でやろうと思ったら、それぐらいの単位のお金が必要でしょう。

 中条 アメリカの航空会社だったら、チャプター・イレブン(米連邦破産法第11条)でもって、自分から倒産してしまうんです。チャプター・イレブンを適用した企業では、すべての債権回収や訴訟がいったん停止され、過去の「負の遺産」が法律によって強制的に断ち切られます。ですから、給料が3000万円だったパイロットでも雇用契約をやり直して、たとえば1500万円で雇えるわけです。

 屋山 いったん会社を潰して清算して、新しい会社をつくったほうがいい。社員は大幅に削減し、いままでの給料の半額で雇う。退職者の年金も減額する。いまの経営者には辞めてもらう。債務に関しては管財人が処理をする。それしか再建の方法はないと思います。

 中条 その際、すでに高額の年金をもらっている人からは、反発が出るでしょうね。しかし、たとえば生命保険でも、会社が潰れて別の会社が引き受けた場合は条件が悪くなる。JALの場合も、少し勘弁してください、といわなければならないでしょう。

 屋山 2年ほど前、TBSが退職者の企業年金を勝手にカットしたことで訴訟となって、TBS側が負けました。だから会社は従業員の年金を勝手にカットできない。社員の3分の2の賛成が必要なのです。日本たばこ産業の場合は、企業年金の2割カットに全員が賛成しました。そうしないと、会社が潰れてしまうからです。しかしJALには、そういう愛社精神がない。ビタ一文もまけないといっています(笑)。

 中条 普通ならば従業員は「会社がつぶれたら元も子もないから、再生するためにはしょうがない。いやだけど」となりますよ。その協力が取り付けられるから企業再生ができるわけです。しかしJALではこれがたいへん難しい。

羽田は拡張してハブ空港

 屋山 そういった協力を取り付けられないのは、労組問題が大きく関係しているんです。JALには8つも組合があって互いにいがみ合っている。

 JALは昔から労組同士の対立が激しいんです。もともとは乗務員組合があり、これは共産党系なので先鋭的で強かった。すると会社側は、それに対抗すべく御用組合をつくりました。客室乗務員組合も同様です。さらに1985年に御巣鷹山のジャンボ機墜落事故が起こり、その経営の立て直しのために、当時自民党総裁だった中曽根康弘さんに頼まれて、鐘紡の伊藤淳二氏が会長に就任したのですが、彼は機長組合まで認めてしまった。伊藤氏が就任した当時が労組統合・社内改革のチャンスだったのですが、失敗したんです。

 労働組合が二分裂、三分裂するというのは、国鉄も同じです。動労国鉄動力車労働組合)と鉄労(鉄道労働組合)があって、一方は反官で徹底的に官僚と戦い、もう一方は、それはあまり良心的ではないという穏健派です。JALも基本的にはこれと同じ構造ですが、8つも乱立していると、当然、規律が乱れています。僕は講演なんかで飛行機を使う際は、条件に航空会社はANAと指定する。JALは違う組合の客室乗務員が乗り合わせると、口も利かないという。そんな会社は危なくてしょうがない。いつかは飛行機が落ちるんじゃないかと(笑)。

 中条 それがいちばん心配されるところです。国鉄の話が出ましたが、あのときも鉄道事故が起こることが一番の心配でした。ストライキだけならまだいい。大事故につながる前に、体制を整えるべきです。ただ、国鉄改革も、社員がストライキをして利用者に大ブーイングとなったことで国民的コンセンサスができあがりました。そういう状態にならないと、大臣もやむをえないといえないのが日本です。いまJALの問題はそこまで来ているかどうか。

 屋山 前原大臣はきちんと認識していると思いますよ。今回選ばれた「再生タスクフォース」は産業再生機構で成功した、いわば精鋭ばかりですから。おそらく、もう日本航空を潰す話にしかならないと思いますが、それでいいと思います。

 中条 私もそう思います。あとは再生チームがそれを実行してもよいという保証を、前原大臣が与えてあげないといけません。航空会社は国家にとって特別云々と横ヤリを入れる人がいるでしょうが、それを聞き入れてはいけません。

 屋山 会社の規模を縮小して出直して、銀行をバックにじっくり腰を据えてやればうまくいくと思いますよ。

 中条 そもそも日本人のマーケットに対しては、日本の航空会社は強いんです。若い人は違うかもしれませんが、やはり大半の日本人は、少々価格が高くても、日本語が通じて、きめ細かいサービスを提供してくれる日本の航空会社を好みます。だからJALも、そのマーケットだけに限定すべきだと思います。ブリティッシュ・エアウェイズやルフトハンザのようなグローバルエアラインはあきらめたほうがいい。

 屋山 たとえば国際線でいうとアメリカとか、アジアだと中国やシンガポールなど、本当の意味での幹線でやっていくことですね。ただ、昔からJALはプライドが高い。たとえば国際線の路線をばらして売るというときに、ANAにだけは売りたくないと思っている。

 中条 これもプライドの話で、羽田空港を拡張すると国内線に強いANAに得だからといって、JALはつい最近まで反対してきたんです。だから、ANAは羽田をベースに国内線中心、JALは成田をベースに国際線中心という構図ができあがってしまった。つまりJALには、会社を発展させるためにはどうしたらいいかという発想はないんですね(笑)。

 屋山 羽田空港については、今度、第4の滑走路ができますが、第5滑走路もつくって、ハブ空港をめざすべきです。そうしないと、韓国の仁川空港がハブ空港の地位を確立してしまい、欧米からの客がどんどん吸い取られて、航空業界全体が衰退してしまいますよ。

新規参入や海外ファンドを受け入れよ

 屋山 航空界の健全化という意味で、JALが新しく出直すという問題とは別に、今後、日本の航空会社で新規参入の可能性はあるでしょうか。

 中条 ローコストキャリア(LCC、低コスト航空会社)は十分ありうると思います。スカイマークエア・ドゥが参入したころは、羽田の発着枠をもらえなかったのですが、いまは新規参入のところには優先的に枠が配分されますから、環境はよくなっています。

 おそらくJALは今後、稼げるビジネス路線だけに限定するでしょう。ANAの路線も基本的にはそこですね。一方で、LCCが新規参入して低運賃で対応するとしても、これもある程度の客がいる路線に限られる。となると問題は、客をそれほど見込めない田舎の路線をどうするのかということです。

 屋山 そういうのはコミューター(小型旅客機)に任せればいい。ヨーロッパでも東南アジアでも、コミューター的なものがあって、立派ではないけれど、ちゃんと利用されています。ヨーロッパで、たとえばパリからジュネーブマルセイユへ行く便は小型で、運賃は非常に安い。日本の路線はどこへ行くにも値段が高すぎる。

 中条 金を掛けることだけが社会資本整備ではないですからね。

 たとえばイギリスでは、パパママ・エアラインというのがあって夫婦2人でやっているんです。夫が社長で元ブリティッシュ・エアウェイズの機長。奥さんが元ブリティッシュ・エアウェイズの客室乗務員で副社長。そして奥さんが自宅で機内食をつくっている(笑)。こういう形があってもいい。

 屋山 大きいジェット機じゃないと駄目だという認識をもっている人が日本にはたくさんいますが、運賃が安くなれば、その認識は変わっていくでしょう。

 中条 制度的には自由ですから。むしろ新規参入の場合、問題は日本人のベンチャー精神のほうです。最近は新規参入して頑張っていこうという人がなかなか出てこない。また先ほど外資規制について触れましたが、アジアには高リスク高リターンを狙うファンドがいっぱいあって、アジアのLCCには、そういうファンドからの資金がかなり入っています。日本もそれを見習ったらいいと思います。

 ただ、ここでも日本人の意識が問題で、じつはスターフライヤーにも外資のファンドが入っている。外資規制があるので3分の1以上の株はもてませんが、スターフライヤーは15%しか受け入れていない。ファンド側は出資を増やしたいといっているのに、外資に対するアレルギーがあるのか、スターフライヤー側が抑えているわけです。

 屋山 世界を見ると、英国のヒースロー空港はスペインの資本が入っていますし、コペンハーゲンの空港はマコーリーがもっている。先進国では日本だけがいまだ空港は実質、国家経営で、非常に閉鎖的です。

 日本人の意識転換ももちろん必要ですが、現状を変えるためには、やはりまずは政官業のコングロマリットをつぶさないことには始まりません。

 中条 この問題については自民党と同じで、じつは民主党内でも非常に幅広い考え方があるんです。自民党政権時代は議論していくなかで徐々に本質がわかってもらえたので、民主党の先生たちには、これからわかってもらわないと。

 屋山 そのためには前原大臣のリーダーシップが肝心です。いま八ツ場ダムの問題でもめていますが、あの問題は、今後を占うメルクマールです。ここで譲ってしまったら、あとはズルズルッと行ってしまう。そういう意味では、撤退の決意をバシッと述べて、ここから1ミリも引かないんだぞという意向を示したのはよかった。

 中条 それは政治家として大事ですね。今回の政権交代は、航空行政の問題を含め、いろいろなものをゼロにするチャンスです。そのチャンスをぜひ生かしてほしい。

 それからもう1つは、これはある民主党議員もいっていることですが、まだ民主党には族議員は育っていないので、育つまでのあいだにいろいろな問題を解決しなければいけません。政権与党になったら、必ず族議員が出てきますから。

 屋山 だからこそ政権交代が必要なんです。族議員が育ってきたら、また政権交代をすればいい。やはり50年もやったら大木になってしまいます。民主党がこれからどう取り組むか、われわれはしっかり見ていく必要があります。

             【VOICE】

<無料低額宿泊所>保護費使途不明…「きちんと説明を」





  入所者の自立を支援するはずの福祉施設で、多額の生活保護費が「業務委託料」名目で使途不明になっている。首都圏を中心に約1900人の生活困窮者を受け入れている無料低額宿泊所運営の大手「FIS」を巡る不明朗支出。元入所者らは「保護費がピンハネされていたのか」と不信感を強め、NPO関係者からは「何のための支出か理解できない」と疑問の声が上がっている。

 埼玉県内に住む元ホームレスの60代男性は、06年に県内の宿泊所に入所した。毎月受け取る生活保護費は約12万円。利用料として9万円を支払えば、手元には3万円しか残らない。入所者同士で「なぜ、こんなに高いのか」とささやき合ったという。

 50代の男性も埼玉県内のFISの宿泊所に入っていた。居室は6畳間をベニヤのような板で仕切った相部屋。入所間もないころ、再就職の一歩手前まで行ったが、職員から「まだ仕事をするのは早い」と言われてあきらめ、就職活動をやめたという。「ここにいたら自立できない」と考えて施設を出たが、払った金がどう使われていたか今も分からない。

 専門家の間にも疑問の声がある。野宿者らの自立支援アパートを運営するNPO法人「ほっとポット」(さいたま市)の藤田孝典代表理事は、「家賃以外に食材費として月1万5000円、人件費として2万円程度しかかからず、入居者の手元に5万〜7万円は残せる。ほかに必要な経費はほとんどないはず」と首をひねった。

 路上生活者らを受け入れる地域生活支援ホームを運営しているNPO「スープの会」(東京都新宿区)では、生活保護費のうち家賃分として支給される「住宅扶助」(約7万円)だけを徴収している。世話人の後藤浩二さんは「利用料を徴収する以上、きちんと性質や目的を説明する必要がある」と指摘した。

 元入所者の相談に応じたこともある自立生活サポートセンター「もやい」の湯浅誠事務局長は、FISについて「自立を支援せず、施設内のトラブルも解決せず、入所者を放置している」と話す。施設になじめずに退所した末、生活保護を打ち切られ、路上生活に戻ってしまう人もいるという。

 湯浅氏は「入所者の手元に残る保護費が増えるよう規制し、自立しやすい環境を整える必要がある」と提言した。

 ◇解説…団体、自治体に「なれ合い」も

 多額な不明朗支出の存在が発覚したFISは、02年から無料低額宿泊所の運営に乗り出し、規模を急速に拡大させてきた。入所者の生活保護費から年間15億円以上を徴収しているとみられるが、任意団体であるため、全体の収支を報告する義務はなく、どの自治体も全体像をつかんでいない。こうした不透明な運営を認めている法の不備は早急に是正する必要がある。

 一方で、自治体側の姿勢にも疑問が残る。社会福祉法は「所管自治体は運営者の帳簿や書類を検査し、経営状況を調査することができる」と規定しているが、FISの宿泊所を別々に所管する都県や政令市、中核市は、毎日新聞が指摘するまで不自然な業務委託料を見逃してきた。千葉市は法に基づく調査に乗り出したが、他の自治体は「権限がない」という理由で見送った。

 こうした消極的とも言える対応の背景に、自治体と施設の「なれ合い」を指摘する福祉関係者もいる。人手と予算の不足に悩む自治体が、大勢の路上生活者らを宿泊所に引き受けてもらう代わりに、運営には口出ししない「丸投げ」の構図だ

 不況で職や住まいを失い、宿泊所を頼るしかない人は増えている。相次ぐトラブルを受け、厚生労働省は本格的な実態調査に乗り出したが、施設側の支出が適切かどうかの解明は想定していない。税金を原資とする生活保護費が何に使われているのか。国や自治体によるチェックは行き届いていない。【毎日新聞 無料低額宿泊所取材班】




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電子レンジからプレステまで購入…千葉県の不正経理

  不正な経理は県警本部を含むほとんどの部署で行われ、将棋盤や卓球台、ゲーム機の購入にも使われていた。

 9日発表された千葉県の全庁調査で、事務用消耗品費の支出のうち46%にあたる30億円が不正経理と判明した。私的流用が疑われる1億1200万円を含め、県は現時点で7億円を管理職やOBら5400人に返還請求する。

 記者会見した森田健作知事は「これじゃ県民に何やっているんだ、とどなられてもしかたがない。申し訳ない」と頭を下げた。

 不正な経理処理で購入した物品の中には、冷蔵庫や電子レンジ、ホットカーペットなど家電製品94件(計380万円)があった。このほか、総務部の出先機関「北総県民センター海匝(かいそう)事務所」(旭市)が卓球台(12万9000円)、県土整備部の出先機関「千葉整備事務所」(千葉市)が将棋盤(1512円)を購入するなど、娯楽用に充てていた。

 また、環境生活部県民生活課は、青少年健全育成でゲームソフトの内容を見るためとして、プレイステーション2(3万2000円)を購入していた。

 各課の金庫で保管していた現金・金券類が計4400万円あることも判明。このうち、業者のプール金から購入した金券類を換金するなどした現金は2300万円。通帳で残高を管理していた。私的流用につながる可能性が高く、県は「刑事告訴・告発の対象となる可能性がある」として、部署名や具体的な手口を明かさなかった。

 業務で使うパソコンやプリンター、台車、ブラインド、芝刈り機、医薬品なども、架空発注により代金を業者の口座にプールする「預け金」や、業者に事実と異なる請求書を提出させて別の物品を納入させる「差し替え」などの不正な経理処理で手に入れていた。

 森田知事は終始、険しい表情で記者会見に臨み、「現知事として心からおわび申し上げます」と深々と頭を下げた。さらに、「森田県政はこのようなことを決して許さない。私は毅然(きぜん)として対処していく」と、不正経理問題が堂本暁子・前知事時代の「負の遺産」との見方も暗に示した。県は再発防止策として特別監察組織を11月に新設する。
                  【読売新聞】   


 血税を自分たちの小遣いぐらいにしか
  考えていないってことね
   

千葉県庁で不正経理30億円、一部私的流用か

 千葉県で2007年度までの5年間に約30億円に上る不正経理が行われていたことが7日、県への取材でわかった。

 「預け」などの手口で全庁的に行われ、県警も含まれていた。県は、このうち約1億1000万円分は県庁、業者双方に記録がないなど私的流用の疑いがあるとみている。県は9日に調査結果を公表後、不正経理にかかわった職員らの特定を進め、処分などを検討する。

 自治体の不正経理問題は、会計検査院が昨年10月に調査結果を発表して以降、各地で発覚。愛知県では、2008年度までの8年間で約14億9000万円にのぼることが明らかになった。

 千葉県は会計検査院の調査結果発表後、農林水産省国土交通省国庫補助事業を扱う部署を対象に内部調査を始めた。

 その後、県警の内偵から、農林水産部職員(当時)が今年2月、「預け」の手口で公金約150万円をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕された。5〜6月には他の2人の農林水産部職員(当時)が計約2150万円を詐取したとして逮捕され、3人のうち2人に1審で有罪判決が出ている。

 県は事件を受け、調査対象を全庁に拡大。内部調査を行うとともに、7月には、弁護士など有識者による外部審査委員会を発足させ、検証作業を進めていた。

 内部調査にかかわった県幹部は「処分者が1000人を超えてもおかしくない。ほぼ全部の部署で不正経理が認められた。ここまでひどいとは思わなかった」と話している。

 ◆預け◆ 商品を架空発注して代金を業者の口座にプールして管理させ、後日購入した別の商品の代金などをその口座から支出する手法。正規の予算執行手続きを経ずに物品が購入でき、私的流用の温床とされる。

                  【読売新聞】 


  ※役所は犯罪者の集まり!!  

<無年金問題>「記録あり」無年金、70歳以上で3万人 社保庁公表せず

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月の土地が贈れる「MOON GIFT CARD」





記録漏れなどで生じた無年金者が推計約3万人いると社会保険庁が7月に公表した際、それとは別に記録上問題がないのに本人の申請忘れなど何らかの事情で無年金の人が多数いるのに公表しなかった ことが分かった。別の無年金者は70歳以上では推計3万人前後。両者は同じ調査で判明したが、一方を公表しなかったことについて社保庁は「(記録漏れで)受給資格に足りない人だけを公表対象にした」と説明するが、専門家は「情報隠しと言われても仕方がない」と指摘している。

 社保庁は7月1日、記録漏れやミスにより、実際には年金受給資格を満たしているのにそれを知らない無年金者が約3万人と推計されるとのサンプル調査の結果を、記者会見で公表。この際、調査の対象は、今後保険料を納めても納付期間が受給資格の25年に満たない60歳以上(07年4月時点)の無年金者73万人から1628人を抽出して実施。685人から回答を得て、回答者の4・6%にあたる32人が、記録漏れなどによる無年金者だと説明していた。

 ところが実際には、社保庁は、国民年金と厚生年金のコンピューター記録上で年金を受け取っていない60歳以上(同)の149万人から4044人を無作為抽出。記録を職員が目で追い、納付25年未満の1628人を拾っていた。この差の2416人は、全員が納付25年以上で「受給資格が明らかなのに年金を受け取っていない人」だが、会見で公表せず配布資料にも記さなかった。後日、民主党議員に説明を求められ、初めて事実関係を明らかにした。

 社保庁は「2416人には受給申請中の人や、年金額を増やすため受給開始年齢を繰り下げる(=先送りする)人も含まれる」と説明。しかし、繰り下げ請求の対象とならない70歳以上が84人(3・5%)いた。

 この人たちは、記録上も完全に受給資格を満たしながら年金を受け取っていない無年金者で、記録漏れなどによる約3万人とは別に、3万人前後いる推計になる。

 社保庁金保険課は「(記録漏れなどによる)無年金者のサンプル調査ということで、国の記録上の『25年未満』を対象にした。情報隠しの意図はない」と説明する。

 ◇制度の根幹の問題

 だがこうした無年金者は、国の周知不足で年金を受け取っていない可能性もある。金沢大の井上英夫教授(社会保障法)は「制度への国民の信頼の根幹にかかわる大変な問題で、実態を早急に明らかにすべきだ。記録上も資格の明らかな無年金者について、社保庁が『申請主義だから受給手続きしない側の問題』と言うなら論外だ」と指摘した。
            【毎日新聞 野倉恵】


※まだまだ 隠しごとは ある!!





事故米更迭 農水前次官が天下り 政権交代前、駆け込みか

官僚の天下りあっせんの全面禁止を掲げる民主党政権発足を目前に、農林水産省の所管団体で「駆け込み天下り」とみられる人事が2日、明らかになった。

 事故米の不正転売事件で昨年9月に更迭された農林水産省白須敏朗事務次官が同日付で、水産業界でつくる社団法人大日本水産会(東京)の会長に就任した。前会長の中須勇雄氏(元水産庁長官)は今年5月の通常総会で4期目に選任されたばかりだったが一転、1日の臨時総会で会長交代を決めた。

 大日本水産会によると会長の任期は1期2年で、年俸は1860万円。白須氏の人選は、中須前会長の推薦によるものだという。同団体の会長は、前会長まで4代続けて農水省OBが就任している。

 今回の人事について農水省秘書課は「省としては全く関与していない」としている。
  
                 【産経新聞


※これも駆け込み天下りだよね