あなたは常識の奴隷?「発想力」テスト10問

na1955622009-07-25






■論理の飛躍で不可能を可能に

「論理パズル」には、不可能を可能にする発想力を育む効果がある。
 世のほとんどの人が「そんなことができるわけがない」と思いこんでいたのに、実は可能であったということは少なくない。ビジネスマンの世界でいえばブレークスルーの実現である。それがいかに重要かは説明するまでもない。
 不可能を可能にするには大変な苦労が伴う。何通りも解決方法を考え、「あれもダメ、これもダメ」と試行錯誤を繰り返し、その先にやっと光明が見えてくるのである。

 エジソン白熱電球を発明した際にネックとなったのは、高熱でも溶けないフィラメントをつくることだった。最終的にフィラメントの材料に京都の竹を使用したことは有名だが、アメリカのエジソンがそこへゆき着くまでにどれだけの試行錯誤を繰り返したか。
 動物の毛や革、金属、植物、果ては友人のヒゲ……。エジソンが試した素材の数は何千種類にも上る。一口に試行錯誤というが、不可能を可能にするにはそこまで突き詰めなければいけないのだ。
 このような忍耐力や根性、探求心を育てていくには子供の頃からの訓練が大切であり、良質の論理パズルはそのための優れた素材となるのである。

 また、お手軽な論理思考の本を読むと「論理を飛躍させてはいけない」などと書いてあるが、これでは優れた発想は生まれない。不可能を可能にするような発想をするには、論理の飛躍が必要である。
 手塚治虫先生は1952年に執筆開始した『鉄腕アトム』の中で、74年に手の平に載る小型の原子力コンピュータが登場すると描いた。
 そして執筆から約20年後の71年、日本人の嶋正利氏が開発した世界初のマイクロプロセッサがインテル社から発表された。手塚先生は原子力という部分に関しては外したものの、手の平コンピュータの登場はほぼ言い当てていたわけだ。こんな発想はお手軽な論理思考の本を読んでも生まれてこない。発想の技術はもっと複雑なのである。
 我々凡人は手塚先生の領域まで到達できないとしても、論理思考の最も重要なポイントは論理の飛躍にある。もちろん何でも思いつきで飛躍させればいいというものではなく、飛躍した後の着地点が「なるほど」と思える論理を組み立てなければいけない。

 論理の飛躍がない発想では、従来と代わり映えのしないものしか生み出せない。その帰結が90年代以降の失われた20年だった。日本経済が長期間低迷を続けている元凶は、日本人の論理的思考能力の欠如にあると私は考えている。
 単にMECEができるだけでは社長の役割は務まらないし、そんなレベルを目標にしていてはいけない。飛躍的でありながらまっとうなものの考え方で、解決策を生み出す能力を身につける必要がある。
 この観点からも、良質の論理パズルを解くことは効果があると言えよう。

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■ 問1:犯人は誰だ

殺人事件の容疑者として、X氏が逮捕されました。使用されたナイフには、X氏の指紋がべったりとついていたし、X氏にはアリバイもありません。しかも彼には殺人を犯す十分な動機まであったのです。しかし、事件を担当するY刑事は、X氏が犯人ではないと確信していました。なぜでしょう?


■ 問2:アリとキリギリス

アリは夏中働いて、冬の間の食べ物をせっせと蓄えました。キリギリスは夏中楽しく歌って過ごしました。あなたがキリギリスだったとして、その冬をどうやって乗りきりますか?


■ 問3:以心伝心?

ある映画館では、普通席の入場券は1300円、指定席は1800円でした。一人目のお客が、黙って2000円を出すと、窓口の女性は「普通席ですか、指定席ですか?」と尋ねました。ところが、二人目のお客が黙って2000円を出したら、「指定席ですね」と言っておつりの200円を返してよこしました。なぜ指定席とわかったのでしょう?


■ 問4:隣人はあなた




A〜Hという経営者8人が、中華料理屋の大きな丸テーブルを囲んで食事(※図参照)。ところがある新聞がスッパ抜いて、大きな汚職事件に発展しました。ボスであるAの右隣が逮捕された経営者。誰なのか推理してください。

A「Gは隣にいなかった」
B「Aの右隣じゃないし、正面でもなかった」
C「Aの正面じゃない」
D「Fの正面だった」
E「Dの隣だった」
F「Aの左隣だった」
G「Dの隣じゃなかった」
H「Fの隣だった」


■ 問5:南向きの家

「この家は北向きだからねえ」
窓の日当たりが悪いとお母さんがため息をつきました。するといたずらっ子のサトシくん、
「四方がみんな南向きの窓の家だって建てられるよ」
「え、ホント?」
さて、どうしたらいいでしょう。


■ 問6:横一線

自動車レースに参加したマサヒコくん、1時間に7周しか回れません。ところが、シンノスケは1時間に8周、ジョンは1時間に9周です。幸い、テツオが1時間に6周ペースなので、最下位だけはまぬがれそう。では、スタートしてから、また4人がピッタリ横並びになるのは、何時間後のことでしょう?


■ 問7:離婚できる?

誰よりも論理的な弁護士、ノザキ氏のところへ、中年男が訪ねてきました。
「私たち夫婦は、何事も意見が食い違い、年中ケンカばかりしています」
「それはお気の毒ですね」
「ついては、離婚したいと思うのですが、いかがでしょうか」
「それは不可能ですね」
ノザキ氏はなぜ、冷たく言い放ったのでしょうか?


■ 問8:ウソつきは何人?

政治家が100人います。彼らは「正直」か「ウソつき」のどちらかです。そして、(1)少なくとも一人は正直、誰でもいいから二人選ぶと、(2)少なくとも一人はウソつき。では、正直が何人で、ウソつきが何人?


■ 問9:脚の長さと数学力

ある統計学者が、町の住民6000人の全員に対して、数学の試験を行いました。それと同時に住民の脚の長さを測定しました。その結果、数学の能力と、脚の長さとの間には、強い相関があることがわかりました。コレはいったいどういうことなのでしょうか。


■ 問10:うまい分担は

3人の男性が、同時に理髪店を訪れました。大至急、調髪とヒゲ剃りをやってくれ、と要求します。しかし店には理容師が2人しかいなくて、調髪に1人あたり15分、ヒゲ剃りに1人あたり5分かかります。さあ、全部で何分かければ終わるでしょうか。

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【解答】

問1:Y刑事が真犯人だから。刑事という設定は目くらまし。推理小説を読んでいると、この手の発想に慣れてくる。
問2:コンサートを開き、ためこんだ食べ物をアリたちに持ってきてもらう。竹内靖雄イソップ寓話の経済倫理学』より。
問3:1000円札1枚と500円玉2個で払ったから。500円玉1個なら普通席だが、それより多いので指定席とわかる。
問4:C。まずFの席が決まり、次にDとHが決まり、……と、以下すべて埋まる。
問5:北極点に建てる。北極点から見たら、360度すべての方向が真南になる。
問6:4人とも1時間にちょうど何周かずつ回るので、1時間後。最小公倍数なんか計算する必要はない。
問7:何事も意見が食い違うのなら、妻は離婚に反対するはずだから。
問8:正直が一人、ウソつきが99人。もし正直な政治家が二人いたら、その二人を組み合わせたときに与えられた条件と合致しない。
問9:「町の全員」には、赤ん坊や子供も入っているから。統計データはしばしばウソをつくという一例。
問10:30分で終わる。順番に職人Aは客1、客2のヘアカット、職人Bは客2のヒゲ、客3のヘアカットとヒゲ、客Aのヒゲを並行して担当すればよい。

※問題は逢沢明著『論理力が身につく大人のクイズ』『頭がよくなる論理パズル パワーアップ編』を基に作成。

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京都大学大学院情報学研究科准教授
逢沢 明

宮内 健=構成

               【プレジデント】